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  試聴レポート

佐藤英夫
中禄サービス株式会社勤務
http://www.churoku.co.jp

映像音響制作、デジタルメディアコンテンツ制作、メディアプロダクトに携わる、映像と音のプロフェッショナル。

ASW GENIUS100 試聴レポート

試聴は1週間、純正スタンドとセットで行いました。
最初の二日は深夜に少ししか鳴らすことができず、しっかりと聞き込むことができたのはその後の1日間だけでしたが、その日は昼前から深夜まで12時間以上連続で聞くことになりました。しかしその間特に疲れを感じることもなく、深夜まで音楽を堪能できました。それほど魅力的な時間でした。

試聴環境は、鉄筋コンクリート造りの集合住宅の標準的なリビングルームで、広さは約10畳、試聴位置の後方には隣接した和室があり、襖を外して空間としては合計16畳程度としています。そのため試聴位置では後方反射がほとんどなく、左右もラックや棚があるためフラッターエコーのような音質を害する要因もなく、残響特性はフローリングの洋間としてはデッドな方です。

今回の試聴では、既存システムのサブスピーカー(Rogers LS3/5A)へ接続しているスピーカーケーブルを外してGENIUS100にそのまま繋ぐという簡単な方法をとりました。

ソースはCDとSACD、デジタルプレイヤーはMARANTZ DV-12S2、アンプはSONY STR-VZ555ES。接続はアナログマルチチャンネルダイレクト。電源やケーブル等は特に凝ったことはしておらず、壁コンセントをホスピタルグレードのものに換え、オーディオ用タップを使用している程度です。今回使用したスピーカーケーブルはSpace&TimeのOmni(左右とも約5m)

設置位置については、既設のメインスピーカー(TANNOY HPD-315A+オリジナルホーン型エンクロージュア)のサイズが大きくて場所を取っており、そのために適切な設置位置探し苦労しますが、メインスピーカーをやや左右に広げて、その内側かつ手前(壁から離れる)方向に設置しました。左右の間隔は当初1.2m程度、試聴位置までの距離は1.5m程度とかなりのニアフィールドなセッティングとしました。


<試聴メモ>

■はじめの印象
音を出した瞬間、すうっときれいな音が響いてくる。きめ細かく刺激のない美音である。全くクセを感じさせない音質とフラットな帯域バランスで、ディスクの情報をきめ細かく拾って聞かせる感じだ。最初はセッティングもアバウトで、深夜のため音量は上げていないが、最初からバランスのよいきれいな音が出てきて驚いた。一番エージングの進んだ個体を貸していただいたということだが、そのせいもあるのだろう、とてもスムーズに音が出て気持ちがよい。

■しっかり聞き込んでみた
セッティングは前後、左右、内振りの角度を調整し、同時にお借りしたスパイク受けを使って慎重に位置決めを行う。

当初よりは左右の幅を広げ、理想的な位置を探る。今回は背面の壁からはずっと離れた状態で試聴した。現実的なセッティングではもっと壁面に近づけると思うが、その場合は低域の量感が増すだろうと思われたが、今回はそうすると大型スピーカーの陰に隠れるような設置になるため敢えて避けた。

■魅力と感じたポイント
まず美音。きつい音、汚い音を出さない。高域の繊細感は特徴的なところ。しかし一切強調感はない。高音だけでなく、周波数特性としては聴感上フラットで、低域も小型スピーカーとしてはかなり低い周波数まで伸びている印象だ。すべての帯域でタイトで、音色にも特定のカラーがない。解像度が高く録音の状態を素直に表すので、モニター的とも言える。モニター的といっても、アラを出す傾向は少なく、正確に情報を拾いできるだけそのまま再現させようという設計が感じられる。繊細だからといって高域に強調感はなく、女性ヴォーカルのサ行が強調されるということもない。密度感と解像感のバランスが素晴らしい。

良く批評で言われる「固い、柔らかい」とか「クール、ウォーム」、または「ジャズ向き、クラシック向き」というような偏ったキャラクターは全く感じない。中庸でありながらも音楽の持っている魅力を良く引き出す、音楽性能とでもいうか。生真面目とも感じるこの性格がドイツ的なのかどうかは、私にはよくわからなかったが、個性を全面に出すタイプではないので、じっくりと時間をかけて質を高めていくと、より素晴らしい音になるのではと期待させられた。

今回は中級クラスのAVアンプでのドライブのため、アンプの力不足が懸念されたが、アンプの個性もスピーカーに似た、クセの少ないスッキリした再生を特徴としており、相性は悪くはなかったようだ。逆にもっとドライブ能力の高い、個性を持ったアンプであれば、違う魅力が出るのではないか感じさせた。

■クラシック
室内楽(長岡京室内アンサンブル)をSACDで聴く。このアンサンブル特有の美しい弦の響きとホールトーンが際立つ。神谷郁代のピアノ(バッハ・イタリア協奏曲/SACD)では、ベーゼンドルファー特有の深い響きが印象的で小型スピーカーのハンディはあまり感じられない。五嶋龍のヴァイオリン(CD)では、美しい音色に魅了される。少々線が細い感じもあるが、これはアンプのせいかも。オーケストラやオルガンの響きも自然でバランスがよい。

オーケストラはガーシュイン(ラプソディー・イン・ブルー/レヴァイン=シカゴ響/CD)を聴く。このオーケストラの持つやや硬質な響きと輝かしいブラスは派手に空間に放たれるが、オーケストラのマスが弱い。低音の響きの質は良いが量的には不足する。大きなホールでのフルオーケストラのスケール感はもどかしい感じだ。どうしても、箱庭的というか、こぢんまりしてしまうところがある。ただし、これはセッティング(壁面との距離の調整やスタンドの選択等)やアンプとの組み合わせで改善できる可能性があるとも思われる。

■ジャズ
Great Jazz Trio(Autumn Leaves)をSACDで聴く。ハンク・ジョーンズの渋いピアノのタッチ、エルビン・ジョーンズが繰り出すうねるリズムは、少々分析的に聞こえるがとても音楽的だ。ニコラス・ペイトン(Payton's Place/CD)は、リズムが少し軽くなる感じもするが、良く弾むベースに乗せられて気持ちよい。そして聴き所である3人のトランペット奏者の掛け合いでは、音色の違いを良く表現する。このあたりはこのスピーカーの能力の高さを感じられるところだ。ロイ・ヘインズ(ラヴ・レター/SACD)ではドラムスのアタックの鋭さとタムやシンバルの音色の多彩さ、質感をしっかり表現する。音像定位も自然。Bassの伸びもいい。最後にウェザーリポートのライブ(8:30/CD)を聴く。これは少しパワー感不足。使ったディスクが2枚組LPを1枚に収めたCD(輸入盤)のため音質的には不利だったかもしれない。


■ポップス
ヴォーカル代表としてフランクシナトラ(Duets/CD)を聴く。様々な歌い手が登場するが、その声質の違い、特徴を良く描き出す。特に女声は魅力的だ。バックのビッグバンドのサウンドも華麗で好ましいが、少し軽いか。この手の音楽の再生としては、もう少し中低域の充実とガッツのようなものが欲しいと感じさせるところがある。スティーリー・ダン(ガウチョ/SACD)を聴く。リズムの切れの良さと空間に漂うリバーブが心地よい。古いが録音の良さを感じさせる。クインシー・ジョーンズ(Back on the block/CD)を聴くと、複雑なオーバーダビングによる現代的録音の代表とも言えるこのディスクを実に魅力的に聴かせる。重なり合う楽器、声、リズム、ハーモニーをいずれも正確かつ美しく再現し、このスピーカーの能力の高さをよく示す。ただ、ここでも低域のパワー不足は感じる。小型スピーカーにおいては、解像度・情報量とパワーの両立は極めて次元の高い課題なのかもしれない。

低域については、カタログ値通り45Hzあたりまではしっかりと再生しており、帯域としては音楽の再生にとって必要十分なものだ。しかもバスレフ構造でありながら、特定の周波数でだぶついたり甘くなったりせず、同じ音色で統一されているのは見事だ。低音については質は極めて高いと言えるが、音量を上げてもスケール感の表現にはやや不足があるということだ。



■映像とのマッチング
今回はマルチチャンネルのセッティングをする時間がなく、フロント2chのみでチェックした。ディスプレイは36インチのハイビジョンテレビ(CRT)である。音だけを聞いていたときとは違って、映像に対する音の重要性を再認識させる高い性能を発揮した。クセのない音質がどんな映像ソフトに対してもその魅力を増幅させるように作用する。

ダイアナ・クラール(Live in Paris/DVD)ではなんと言ってもクラールの声の質感が素晴らしいし、名手John Claytonのベースが心地よく、音の情報量が多くきめ細かいため、ライブの雰囲気の再現も良い。これはかなりクセのある自分のシステム以上のものを感じた。Count Basieのライブ(At Carnegie Hall/DVD)では、録音の古さ(1951年)は感じられるが、バランスの良さで映像とのマッチングは良好。今回は音楽ソフトでしか試さなかったが、AV用途では極めて高い性能ではないかと感じた。

AV用を意識して設計されたスピーカーには、質が伴わないものが少なくないなかで、このスピーカーの優れたところが十分に発揮できると思われた。私のように、音楽メインでAVに取り組んでいる人の中にはマルチチャンネルでもセンタースピーカーやサブウーハーを使わず、4.0chで楽しむ方がいると思います。そういうケースでは、GENIUS100を4台使うことでかなり質の高いマルチチャンネル環境が構築できるでしょう。

今回のモニターで映像とのマッチングについては、既存システムよりも明らかにメリットを感じることができました。省スペースで高音質、クセがなくどんなソースの魅力も出してくるところがまさにAVにも適した性能と言えるでしょう。

■既存のシステムとの比較

私は録音やコンテンツ制作を仕事にしていたこともあり、仕事ではモニタースピーカーに接する訳ですが、自宅ではゆったりリラックスして音楽を楽しむことが多いため、スピーカーに求めるものも、音楽表現として魅力があるかどうかが基準です。クラシックからジャズ、ソウル、ボサノバまで幅広く聴きますので、その音楽の持っている雰囲気を上手く再現してくれるかどうかがポイントです。

クラシックならば、楽器やオーケストラの質感だけでなく、ホールの響き、ステージの広さや奥行きも再現したいと考えます。ジャズならばできるだけ楽器の音をリアルに、しかし距離感はほどほどでよいと考えます。もちろんかぶりつきの魅力というか、眼前で奏される迫力も魅力的ですが、環境に制約のある自宅では、ホールの客席中ぐらいの位置がどんな音楽も気持ち良く聴けるという理由です。

現在使用中のスピーカーシステムは70年代後半発売の古いものではありますが、音楽のつかみ(バランスや骨格の表現)に優れていて、空間表現にも独特の魅力があるため、長い間換えられずに居座っています。しかし、今回GENIUS100のモニター試聴で、現代の小型スピーカーが持つ高い実力を実感することができましたし、GENIUS100については、ジャンルとして苦手なものが少なく、どんなものにも幅広く適応する能力には感心しました。数ある小型のスピーカーの中でも、物理特性と音質が良い方向で比例する珍しいケースとも言えるのではないでしょうか。

長く付き合ってきたLS3/5Aとの比較もなかなか面白いものでした。小編成のクラシック音楽では、ややくすんだ音色ながらその表現力にはまだまだLS3/5Aならではの雰囲気、奥行き感、空気感があり今だ魅力的ではあるのですが、反面アタックに弱いところ、バランスの良い音量が限られ、パワーが入らないところ等々、設計の古さを感じることとなりました。小型スピーカー対決とすると、総合的には新しいソースへの適応も含めて、GENIUS100の圧勝でした。サブスピーカーとしては出来すぎでしょう。

■設置
セッティングで気になった点は、2ウェイのシステムですが、同軸ではありませんので、高さ方向での位置合わせは重要です。今回は60センチの専用スピーカースタンドと、スパイク受けにBlack Diamond RacingのMini Pitsを使用し、合わせておよそ62センチのスタンド高となりましたが、比較のため高さの違う2種類の椅子で試聴しました。トゥイーターの位置より耳の位置が上にくると少しバランスが崩れ音場が乱れる印象になります。耳の高さをトゥイーターよりやや下にすると、極めてスッキリと開放感ある音の広がりが得られました。この結果から、高さ方向の調整は十分慎重に行う必要があると痛感しました。一方で水平方向の条件は幅、振り角度とも、それほど神経質ではありません。トゥイーターの水平方向の指向性は十分広めで、結果スイートスポットは広めに感じました。

GENIUS100には、楕円形のサランネットが付属していますが、これを外すと高域はよりくっきりしレベルも上がったように感じます。ですが必ずしも質的な変化(質が高まる)とも言い切れないので、お好みでしょうか。

曲によっては中低音の不足とかスケール感の表現について言及しましたが、低域の周波数は意外に低くまで再生できており、低音域の楽器の重なりでも形を保ったまま再生できるのは、能力の高さを感じました。一般に中低音のスケール感の表現と解像感、スピード感は両立しにくいところがありますので、このスピーカーの場合は、質を優先した設計であると思います。

普通、一定の音量(大きめの音量)で再生すると良いバランスで聴けても、かなり小さい音量でバランス良く鳴らすのはなかなか難しいものです。このスピーカーについては、そもそも低域の量感不足の傾向がありますが、音量を絞っても基本的にそのバランスは変わらず、トーンコントロールで若干低域を補うだけで、かなり満足のいく音質(バランス)が得られます。一般の音楽ファンや深夜に集合住宅で楽しむ人にとってはこれも重要なことです。高級なヘッドフォンが流行っていますが、暗騒音が小さくS/Nに優れた深夜なら、あまり大きな音を出さずとも、高音質で聞けるということは十分魅力的です。

インピーダンスが4Ωということで、アンプの能力によっては厳しいのではと予想しましたが、今回は良い結果でした。実際のインピーダンス特性(周波数帯域毎のインピーダンス特性を示すグラフ)を公開されると良いと思います。


■こんな人にお勧め
いろいろなジャンルの音楽を聴きながら、どんな人に向いているかと考えてみました。ぱっと聴いてハッキリした個性が感じられるようなタイプではなく、じっくり聞き込んでいくと音楽やソースの魅力をきめ細かく引き出してくるというタイプです。そしてセッティングや組み合わせでその魅力が増していく(と思われる)ため、初心者向けの製品ではないでしょう。ある程度のオーディオの経験があるか、または音楽にかかわる仕事をしている方、ブランドや見た目(大きいシステム)に拘らず、質の良いシステムを指向している方に是非聴いていただきたい製品です。今回はセッティングや組み合わせ面では十分なテストができませんでしたが、鳴らしにくい(扱いづらい)スピーカーではないと思います。良質なスタンドと一定水準以上のアンプやプレイヤーがあれば、最初からバランスの良い音が聴けると思います。

大型のシステムを持つマニアのサブシステムとしてはもちろん、幅広いジャンルを聴く人に、小型でオールマイティなものを薦めるには最適でしょう。私が仕事でモニター的に使うにも十分な性能と思います。

雑誌等ではなかなか取り上げられない製品ですから、店頭でよい状態で聴くことができると、耳の良いファンには伝わるはずと思います。

■最後に
モニター商品を返却してしばらく経っても記憶に鮮明に残る、ちょっと生真面目だけどとても繊細なサウンドは、もう一度、できたらもっと良い条件(良いアンプで)で聴きたいと思わせるものでした。ほんとうに良い経験をさせていただき、感謝しております。

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